白内障手術
白内障の手術では、まず瞳孔を開く目薬の点眼を行い、手術室のベッドに腰かけていただいて眼の周囲を消毒します。顕微鏡の光を最初のうちは眩しく感じますが、次第に慣れてきますのでご安心ください。その後、点眼麻酔を行って手術の開始となります。
手術中の咳やくしゃみ、急激な動作、いきみは危険であり、失明の可能性もあるため、リラックスして受けていただくことが重要です。手術の所要時間は局所麻酔が効いてきてから10~15分程度です。手術終了後は、安全性をより高めるために20分程度安静にしていただきます。
翌日に外来で受診いただきますが、それまでの過ごし方については病院スタッフの指示を守り、眼帯を外さないようにしてください。
手術方法
Step1水晶体前嚢の切開
眼球に水晶体を摘出するための出口を作り、水晶体前嚢という水晶体を包んでいる膜を切開します。
Step2水晶体の中身の乳化吸引
超音波の器械を挿入し、濁った水晶体を細かく砕く、きれいに吸引します。
Step3眼内レンズの挿入
水晶体を包んでいた袋がきれいになったら、そこに折りたたまれた状態の眼内レンズを挿入して広げます。
Step4眼内レンズの固定
眼内レンズがしっかり固定されていることを確認したら手術は終了です。
手術の危険性について
白内障手術では、3000眼に1件の割合で、目の中に雑菌が入ることが学会で報告されています。その場合、手術前より見え方が悪化してしまう可能性があります。これを防ぐために、当院では徹底的な消毒など衛生管理に配慮することはもちろん、患者様には手術の最低3日前から抗生剤の点眼をお願いしております。
また、水晶体を包む膜が弱い方、膜を支えるチン氏小帯が弱い方の場合には、医師の判断により眼内レンズの挿入を中止し、後日に眼内レンズを固定する手術を行うこともあります。この方法では見え方の回復に少し時間がかかりますが、最終的には視力が向上します。
極めてまれですが、眼内レンズを挿入することで、異物反応による拒絶反応が約5000人に1人生じるとの国外での報告もあります。当院ではまだこうしたケースがありませんが、点眼などによる治療が不可能な場合には、眼内レンズを後日、摘出する必要が生じる場合もあります。
また、感染症・緑内障・網膜剥離・眼内出血・駆逐性出血などの合併症のために、まれですが失明する危険もあります。ぶどう膜炎・強膜炎・角膜炎などの眼科的疾患、糖尿病やリウマチ(膠原病)、高血圧、感染症などがある場合、合併症が起こる危険性は高まるとされています。
当院の特徴
NASA基準の塵埃クラスがクラス100の手術室
当院では、空気の清浄度を示す「NASA基準」をクリアする「バイオクリーナー」を手術室に設置して、ほとんど肉眼では見ることのできない浮遊微粒子まで取り除くことで、清潔で安全な手術室を実現しています。アメリカ航空宇宙局(NASA)が定めた単位である「NASA基準」は、手術室内のクリーン度を表示する際に使われています。
手術で使う機器・器具の管理、感染予防対策を徹底的に行うだけでなく当院の手術室は陽圧構造になっており、埃や塵を除去する特別な換気システムを備えています。これでウイルスなどの感染予防をしっかり行って、清潔な手術室環境を実現しています。
大学病院同等クラスの設備
当院では最新鋭ドイツのZEISS(ツアイス)社製 手術顕微鏡や、アルコン社のインフィニティビジョンシステムを完備しており、患者様に質の高い治療を提供できる環境を整えております。
手術ではわずか1.0mmと2.4mmの切り傷を付けるだけの最新の手術法を用い、基本的に顕微鏡下で行います。白内障の進行が重度の場合など、患者様の眼の状態によっては、最適な別の手術手法を選択する場合もありますが、その際にはしっかりご説明してから手術を行っています。
手術症例20,000件を越える執刀医
当院で白内障手術を担当するのは、白内障手術症例2万件以上の執刀経験を持つベテランの医師です。豊富な経験を基に、安全で確実な手術だけでなく、手術のタイミングや眼内レンズの選択についてもアドバイスを行っています。安心してお任せください。
選べる眼内レンズ
眼内レンズはその選択によって手術後の見え方が変わってきます。眼内レンズの選択は、とても重要なものですので、当院では患者様が最適なものをお選びいただけるよう配慮しています。過去にそのような見え方をしてきて、今後はどのような見え方をご希望されるのかをアンケートなどで詳しくお聞きし、患者様のライフスタイルをできるだけ把握したうえで眼内レンズの種類、度数についてアドバイスをしています。
また、遠近両用レンズなどもご用意していますので、見え方に付加価値をご希望されている場合もお気軽にご相談ください。
また、乱視の場合、通常の白内障手術では視力は回復しても乱視は治らないため、乱視のお悩みを解消するトーリックレンズもご用意しています。
患者様目線の診療
白内障手術はリラックスして受けていただくことで安全性が高まり、手術後の見え方にご満足いただくためには、事前にご希望される見え方についてしっかりコミュニケーションを取る必要があります。そのため、当院では患者様がなんでも気軽に相談でき、安心していただけるよう配慮しています。
誠実で優しい言葉と対応を基本に、患者様が家族とお話されているような安心感を持っていただけるよう心がけています。患者様はお悩みやご不安があってご来院されていることを念頭に、温かくお迎えし、カウンセリングや検査を丁寧に行い、診察ではわかりやすくご説明して、最適な治療を患者様と一緒に考えていきます。
手術の流れ
手術まで
初診
基礎的な視力や眼圧などの検査を行って、手術の必要性を調べます。必要と診断されたら、手術日を決定します。
検査
手術に備えた検査を行います。眼球の長さ、角膜の形状などを調べます。
術前診察
手術の1週間ほど前にご来院いただき、眼内レンズや術式についてご相談し、決定します。
手術
- 目薬の点眼による麻酔を行います。痛みはありませんのでご安心ください。
- 角膜の外側(耳の方)に2.4㎜、下側(足の方)に1㎜の切開を行います。
- 水晶体を包んでいる袋のうち、前側にある前嚢を円形に切り取ります。
- 超音波で水晶体の核を細かく砕き、きれいに吸引して嚢だけ残します。
- 嚢の中に折りたたまれた眼内レンズを挿入し、中で広げて固定します。
術後
定期検診
翌日、2~3日後、1週間後、2週間後、1ヶ月後の定期検診を行います。状態によって、その先も何度か定期検診を受けていただく場合もあります。
生活上の注意
術後は、仕事や家事などの軽作業は問題ありません。ただし、術後1ヶ月間は、ほこりや水などが直接目に触れることを避け、目の酷使を控えるようにしましょう。
術後1週間の過ごし方
許可されるまで控えましょう。洗顔や先発は、通常であれば術後1週間は控えます。ただし、美容院などであおむけになって受ける洗髪であれば構いません。
控えたいこと
- パソコン作業やスマートフォンの長時間利用
- テレビ鑑賞、読書
- 飲酒(手術当日は禁酒ですが、術後も1週間は控えることが望ましいとされています)
気を付けたいこと
- 入浴
- 軽い運動(激しい運動は許可が出てからにしてください)
- 目に水や汗などが入らないよう、しっかり注意しましょう
術後、1ヶ月間禁止されること
- ほこりっぽい場所での運動(土の運動場でのスポーツなど)
- 水泳
なお、翌日からお車の運転をされたいという方は、事前にご相談ください。また、手術を受けた後、当日は運転できませんのでご注意ください。